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【前編】勝手に#ブックカバーチャレンジ!~韓国H大学の芸術学科編~

【前編】勝手に#ブックカバーチャレンジ!~韓国H大学の芸術学科編~

ブックカバーチャレンジが広まっていますが、私のところにまだ回ってこない+やれと言われるとあまり気が乗らないので、自分で勝手に紹介するブックカバーチャレンジをはじめます!

とはいっても、ただ自分のオススメする本を紹介するだけじゃ、つまらない。

ということで、韓国のH大学で芸術学を大学・大学院ともに専攻しながら、面白く読めた本を紹介いたします!

はじめに:H大学ってなんだよ・・・

H大学は、韓国のソウルにあるホンイク大学(Hongik University)のことです(上写真、以下H大学)。

今は行けなくなってしまいましたが、日本をはじめ多くの観光客で賑わっているホットスポット(?)です。(とにかく学生+観光客が多くて、近場に住んでいる身としては大変でした。)

日本の美大にも進学を考えていましたが、中高の内申で外国人枠が狙えるのでは、、と思い、芸術学専攻を志望し、見事に(!)受かりました。※筆者は中高ソウルの一般校に通ってました。

H大もそうですが、韓国の美大(実技と理論)の多くは、総合大学の中のいちコースという位置づけです。これはソウル大学やソウル科学技術大学、建国大学なども同様です。

日本で言うような「美大」という位置づけに近いものに、韓国藝術総合学校(上写真、一番現実味がある)という教育機関があります。名前からお察しのとおり、美術をはじめ伝統舞踊など、芸術専門の学校です。

H大の場合、実技(絵画・彫刻・陶芸ガラス工芸・プロダクトデザイン、など)をメインに美大としてくくられ、人文大+美大の曖昧なポジションとして、芸術学科は存在していました。

次に:芸術学科ってなんだよ・・・

H大の美大で唯一の理論科だった芸術学科は、良く言えば「幅広く勉強に取り組める」、悪く言えば「広くも浅い」カリキュラムで組まれていました。

筆者が入学したのは2013年でしたが、当時(おそらく今もそこまで変わっていません)は美術史・美学・芸術学の3つのカテゴリーを中心に、カリキュラムが組まれていました。

大雑把に説明すると、

・美術史:東洋~西洋、古代~現代、仏教美術
・美学:ギリシャ哲学、キルケゴール、ベンヤミン、ニーチェ、などなど
・芸術学:主に現代美術(20世紀~21世紀)、もといそれらを取り巻く批評や言説など

という感じです。

副専攻もしなかった私は、教養授業に加えて、芸術学科の授業をとりました(総合取得単位140点以上で当時は卒業。これは他の実技専攻も同様)。入学当初はあれもこれも授業に入れてましたが、広く(浅く)学んでいるうちに、方向性がどんどん定まったような気がします。(ちなみにゼミはありませんでした。論文のテーマはわりと自由で、上記の3つの分野に当てはまるカテゴリーから、教授にティーチングをしてもらうかたちです。)

怒涛の4年をH大で過ごしましたが、専攻授業で読んだ本の中で、オススメしたい韓国語の本を、7冊、この場でこれから紹介していきます!

#ブックカバーチャレンジ~韓国H大学の芸術学科編~

というわけで、芸術学科に在籍しながら、印象に残っている7冊を勝手に紹介しようと思います!

①『創造の帝国』(イム・グネ、2009、ジアン出版社)

厳密に言えば授業で習っていません(苦笑)。ただ、入試の面接で、決定打になったと思われる一冊です。外国人枠で入学した私は、成績と面接をパスする必要がありました(定員は0、なので決まっていませんでした)。教授の「最近読んだ本で、印象に残っているものは」という質問の答えが、この本でした。美術に興味を持って自分なりに勉強をしていたときに、本屋で見つけたのがこの一冊でした。マーティン・クリードや、ダミアン・ハースト、サラ・ルーカス、トレイシー・エミンなどをはじめとした、YBAとその周辺のアーティストをイギリスの政策やアートプロジェクトの動向と照らし合わせながら紹介している本です。局所的ではありますが、現代アートの入門書としても○。(ちなみに写真は一番新しい版本の表紙。内容も書き足されているとか、、)

②『20世紀のメディア哲学』(シム・ヘリョン、2012、グリンビ)

大学1年生の頃、「メディア哲学の理解」という授業がありました。今振り返ると、ものすごくハードだった、、というのも、単位が1で二時間授業、かつ内容が難しいという、授業でした。(ビデオアートでも見るのかな?くらいに思っていた学生は、私を含め多かったはず・・、因みに今は単位が2になったそう)

授業のメイン教材になったのは、こちらの本。目次を見ると、哲学者別に思想がまとめられています。ワルター・ベンヤミン、テオドール・アドルノ、ギュンター・アンダース、マーシャル・マクルーハン、フリードリヒ・キットラー、ジャン・ボードリャール、ウィレム・フルサー、ポール・ヴィリリオ、ノルベルト・ヴォルツ、ゲーツ・グロスクラウス、というラインナップです。一人ひとりの哲学や思想を、2回の授業で学ぶ、、という感じです。(因みに教授はシムさんではありません。)

環境と芸術、受け手の人間がどうテクノロジーによって変わっていく(逆にいかない)のか興味があった身としては、とても面白い授業でした。今となっては、キットラーとヴィリリオ、マクルーハン、フルサー、そしてベンヤミンくらいしか読み続けられてませんが、本格的に学問に取り組んでいこうと思うきっかけになった、一冊です。今でもたまに読み返して自分を元気付けてます(がんばれ自分・・)。

③『関係性の美学』(ニコラ・ブリオー、ヒョン・ジヨン訳、2011、ミジンサ)

ほほ、、実は2011年に翻訳されたのです。。当時芸術学の担当をしていた教授(チョン・ヨンシムさん、以下Y教授)は、ガンガン20世紀後半~21世紀の現代美術を授業で紹介してくれました。その中でも『関係性の美学』は授業のハイライトみたいな位置づけで、本に登場するアーティストの数も多いからか、授業で積極的に教えてくれました(それこそ「浅く」でしたが・・)。テストでもヤマ扱いされるほどでしたね。

ただやっぱり、「グローバル」さを強調されるあまり、授業では「社会的な溝」をはじめとした効用や作用の分析から掘り下げられなかった、、と今になって思います。授業のよしあしはひとまず置いといて、それでも読み返すきっかけになったのは、とてもよかったと思ってます。というのも、大学院で『ポストプロダクション』をはじめ、デイヴィッド・ジョスリットの『アフター・アート』やクレア・ビショップの『人工地獄』、『ラディカル・ミュゼオロジー』と結びつけて読むことになったので、、(因みに、『アフター・アート』と『人工地獄』は、翻訳も一応進んでいるらしいです。。)

④『アンフォルム:無形なものの事典』(イヴ=アラン・ボワ、ロザリンド・クラウス、チョン・ヨンシムほか訳、2013、ミジンサ)

韓国語のタイトルでは「非定型」となっています。芸術学を受け持っていたY教授が翻訳に加わっていたこともあり、『関係性の美学』とならびに、授業のハイライトとテスト範囲に必ず出るテーマでした。当時はステートメントの解読ばかりしていましたが、(これもまた『関係性の美学』に続き)作品やアーティストの例が豊富で、アーティストを知るのにもいい本でした。

ただやっぱり授業では「浅く」習ってしまい、アーティストのどの作品がエントロピーで~という内容に、終始してしまいました。改めて読み返してみると、Form(形式)がどう変質していくか、クラウスの「拡張された彫刻の場」の内容と通じるものがあったりと、いろいろと発見ができて面白いです。(あと表紙が断然かっこいい!笑)

⑤『不安とともに生きる』(アルネ・グレン、ハ・ソンギュ訳、2016、b)

美学の授業も同様に「広く」を重視していたので、あれこれと集中して読めなかったのが事実です。ニーチェのあのテキストを再来週まで読んで、次はハイデガーの、次はクラカウアー、、といった具合にテキストを読んでいましたが、4年の「現代美学講義」という授業では、1学期に二冊だけ読むことになりました。翻訳のハ・ソンギュさん(というか教授)がそれまでの美学の授業も受け持っていましたが、深く読ませようと4年生のこの授業は方針を変えたのかと。その時の一冊がこの本です(因みにもう一冊はヘルマン・シュミッツの『愛(Die Liebe)』でした。一年後出版するといっていたが、、、)

不安とともに生きる』は、タイトルが示すようにキルケゴールの著作の分析になっています。だからと言って自己啓発系の薄っぺらい内容ではなく、『不安の概念』や『死に至る病』におけるキルケゴールにおける(単語や考えの)捉え方を考察する内容になっています。キルケゴールの哲学を噛み砕くだけでなく、テキストとどれくらい真剣に向き合えるか、という研究や勉強の志にもつながりました。

⑥『文学と芸術の歴史』(アルノウト・ハウザー、ペク・ナクチョン訳、2000、チャンビ

韓国語では「文学と芸術の社会史」と表記されている一冊。大学2年生のころ「西洋美術の理解1」(だったはず、、)という授業で、毎回手書きでレポートを書かされる、ハードな記憶が残ってます。。ですが、当時、記録をどう分析し、理論としてアプローチしていくか、というハウザーの態度が、とても新鮮に感じられました。もちろん他の授業(特に美術史関連)でも、教授から色々と教わりましたが、本でワンステップ置いているからか、ハウザーを介しての歴史の読み方は、説得力が格段と違いました。(ちなみに手書きのレポートが辛くて「西洋美術の理解2」は受講せず、、)

⑦『絶対的なものへの熱望が生みだすメランコリー』(ヤン・ヘギュ、2009、現実文化)

最後に紹介するのは、韓国のコンテンポラリー・アートを代表するヤン・ヘギュの作品・論考集です。おそらく日本ではイ・ブルやソ・ドホ(一般的にはス・ドホのはず、、)ほど知名度が低いと思いますが、むしろ世界的にはヤン・ヘギュのほうが知られているのかも。当時「韓国近代美術史」の授業のレポートのテーマを考えていて、本来ならくじ引きで決めるところを頑なに拒否して選んだテーマが、ヤン・ヘギュでした。(特に理由はありませんでしたが、授業で教わった人以外の研究をしてみたいな、と思った理由が大きいですかね。)

そこで手に入れたのが、この本でした。別の質感の紙でテキストが分けられるなど、本の構成もよく、また幅広く作品をアーティスト・研究者の視点で描写しているところが、良かった一冊です。読みながら、「それはどうなんだろ、、(悪い意味で)」と思えてしまうインスタレーションも度々登場しますが、同時代のアーティストを把握する上では、貴重な情報源であることは間違いないです。ちなみに、同じ出版社(現実文化)からは、2010年に『3つのための声』という本も発売されています。こちらもヤン・ヘギュを研究する上で重要な本です。

 

と、あくまで個人差はありますが、韓国の美大にはこんな授業があって、こんな本を読まされるのか、、という情報として、共有してみました!

【中編】は大学院ヴァージョン(Part 1)です。乞うご期待!