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展示レビュー:《没入と均衡》展 “Immersion vs Balance” at Gallery Kiche Seoul

展示会場入り口

「今日の韓国の絵画」について、今回の記事をとおして小規模ながらアプローチできたらと考えた。それでは、今日の韓国の絵画には、どのような作品があるのか?今回は “Immersion vs Balance” 《没入と均衡》展の作品をメインに紹介したい。

1. 韓国と絵画

チャン・ヨンヘ重工業+Takuji Kogoチャン・ヨンヘ重工業+Takuji Kogo, <A LOVE SUPREME>(Sound Effects Seoul 2017)

韓国のコンテンポラリー・アートを思い浮かべると、どうしてもメディア・アートの考えが過ぎってしまう。それは私だけだろうか。これには2つの理由があると私は考える。ひとつは、実際にメディア・アート―映像、サウンド・インスタレーション、オブジェ―をベースに活動し、有名になっているからである。ペク・ナムジュン(ナムジュン・パイク)の精神を引き継いでいると言わないにしても、キム・スジャ(김수자)イ・ブル(이불)チャン・ヨンヘ重工業(장영혜중공업)、そして近年のアーティストで言えばヤン・ヘギュ(양혜규)イム・フンスン(임흥순)クォン・ハユン(권하윤)。SCAI THE BATHHOUSEで展示も行われたムン&チョンこと、ムン・ギョンウォンとチョン・ジュノ(문경원, 전준호)も、この分野で活躍している。もちろん彼らの作品が全てメディア・アートと言えるかどうかも気にすべきところではあるが、ここでは絵画や彫刻と正反対の物、とでも考えていただけたら嬉しい。絵画や彫刻という伝統的な素材とは対立項に存在するものとして、私は韓国のアーティストはメディア・アートに長けている、という印象がなかなか払拭できなかった。

パク・ソボ(박서보)作品の前に立つパク・ソボ(박서보)

これにはもう一つ理由がある。韓国の代表的な絵画というものが抽象画、つまり70年代を中心に描かれた「ダンセッファ(단색화)」―発音としては「タンセカ」に近いので私はこの表記をあまり好んでいないが―以外、あまり世界的に知られていないのではないか、と考える。韓国内で、日本の絵画と言ったら浮世絵や奈良美智の話題に留まってしまうのと同じ様に、(韓)国外では韓国の絵画をダンセッファとして注目はしても、コンテンポラリーの方までカバーリングが出来ていない事情もあるのではないかと思う。ダンセッファは、ひとつのマイルストーンではあるにしても、日韓中で考えた時にもやや時代の遅いペインティングの動向だ。2000年以降、中国のペインティングが注目されたのに対して、韓国は「かつての」作品であるダンセッファが注目されたのである―そして、80年代の「民衆芸術(민중예술)」も含んだペインティングも、世界的には未だ注目されていない―。このような現状で、今日の潮流を捉えることは簡単ではなく、むしろ事後的な姿勢が必要なのかもしれない。しかし、事後的な姿勢も今の記録―展示会の紹介文、短い批評文、その動向に興味を持った人の存在―なしには、汲み取るものがないまま、アウトラインだけを大まかに描いたものとなってしまう。私としては、それでも網目にひっかかるような「今日の韓国の絵画」について、今回の記事をとおして小規模ながらアプローチできたらと考えた。それでは、今日の韓国の絵画には、どのような作品があるのか?今回は《没入と均衡》展の作品をメインに紹介したい。

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